高等教育機関に在籍する聴覚障害学生の修学上の困難には、聴覚の機能的損失に
起因する情報取得の難しさのみならず、他者とのコミュニケーションや人間関係の
問題が存在します。
その上、聴覚障害学生個人の聴力や教育歴、コミュニケーションの手段等は
さまざまであり、先に述べた困難がどのような背景をもつ聴覚障害学生において
起こりやすいのかを調べる必要があります。
そこで本研究では、質問紙調査を行い、多変量解析をとおしてその表象を探りました。
その結果、聴覚障害学生が感じる困難として「対人関係を中心とした困難」と
「講義理解を中心とした困難」の2点に分化が認められました。
「対人関係を中心とした困難」に接しやすい聴覚障害学生の特徴は聴力レベル90dBHL
未満である者、被支援経験が少ない者、統合教育を経験した者であることがわかりました。
一方「講義理解を中心とした困難」に接しやすい聴覚障害学生の特徴は、聴力レベル
90dBHL以上の者、小学校から高校まで一貫して特別支援学校(聴覚障害)、ろう学校に
在籍経験を持つ者でした。コミュニケーション手段・年齢・学年・精査・被支援内容の別と
いった変数に関しては、上記の困難について、傾向を認めませんでした。
本調査の詳細は以下の文献に掲載されています。
杉中拓央,原島恒夫(2016)高等教育場面における聴覚障害学生の修学上の困難さと
個人要因との関連.聴覚言語障害, 45(1),11-21 .
回答頂いた聴覚障害学生の皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
【文献等未掲載の補足情報】※近日掲載
聴覚障害学生の皆様から、高等教育の支援に対して、数々の貴重な自由記述を頂き
ましたが、諸事情より雑誌には掲載できませんでしたので、こちらで一部を紹介します。
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