イベント内で取り上げられなかった残りのコメントシートについて、
講師が後日ディスカッションいたしました。頂いたコメントは原文ママの
掲載です。ご質問の意図と異なる回答がありましたら、ご容赦願います。
下記のやりとりについて、さらにご意見等ございます方は
ぜひadmin@outreach33.jpまでお寄せください。記名・匿名で掲載させて頂きます。
また、万一掲載内容に問題等ございましたら、ご遠慮なく上記まで連絡ください。
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コメント/「キャリア発達」という視点で、学齢期(幼児期)、青年期、成人期それぞれの発達年齢でどんなことが必要になるのか、どのお話も非常にわかりやすく勉強になりました。私はろう学校で進路担当をしています。就労支援コーディネータという立場で企業開拓や就労支援、卒業生の定着支援を主な業務としていることもあり、戸田様のお話は共感する部分がたくさんありました。特に定着のための力はまさに感じている所で、お話の中にあった社会に出る前に身につけておきたいコミュニケーションの力や自己理解の力を学校の中でいかに育てていくかが今抱えている課題なのだろうと改めて感じました。キャリア発達の要素にある「人と環境の相互作用」「時間的流れ」「空間的広がり」において聴覚障害があるゆえに機会や経験、情報が限られたものになりやすく、経験によって得ることのできる学び、対話によって深められる言語力や社会性、自己理解に難しさが出てきてしまうのではと考えています。個人的には、きこえない(きこえにくい)人も含めた広い社会の中で人とどうかかわるかをどう指導・支援するかが、これからの学校がすべきことではと感じています。
戸田重央氏(以下、戸田)/ろう学校の進路指導の先生より、このようなご意見をいただけたことは大変ありがたいです。学校生活の限られた時間で社会に出る準備を身につけることは本当に大変だと思います。その中で先生方も生徒の皆さんも十分ベストを尽くされていると思われます。
これからの聴覚障害者の社会参加において、学校だけがその責務を負うのではなく、受け入れる側(社会)で多様な人を受け入れる風土を育んでいく必要もあると思いました。今はそうした潮流も感じられますので、この機会を活かして聴覚障害の理解を少しでも広めていきたいと思います。
コメント/戸田さんのご講演の中で聴覚障がい者の就労状況について特に興味を持ちました。障がい者が企業などに雇用してもらうためにある障がい者枠での雇用が、むしろ働ける権利はあるものの給与や階級制度において正採用の人たちよりかなり不利である優劣があると思います。障がい者が自分に合った所で働くことができ、経済的に困ることなく生活できる、障がい者の一人の人間として、障がいが理由になることなく働ける環境整備が重要だと思いました(障がい者枠の内容見直し等)
戸田/ご関心をお寄せいただきありがとうございます。今は働き方が変わり始め、一つの会社にしがみつくことが必ずしも正解ではなくなってきました。もしかしたら副業を持つことが常識になる社会も訪れるかもしれません。通信やインフラなど環境も大きく変わる中で障害による困りごとが大きく減ることも予想されます。時代の流れや変化を常感じるアンテナは張り続けていたいところです。
コメント/戸田先生。「相談する」ということ自体の難しさに気付きました。相談員のお仕事は、相談を聞くことだけでなく相談する力を身につける支援をすることなのかもと思いました。四人の先生方にお話を伺い「自分を知り、説明すること」がとても重要だと感じました。特に「何となく雰囲気」で生きてしまう自分自身、説明力を高めたいなあ!と強く思いました。
戸田/ご質問者のご意見で、いい気付きをいただきました。ありがとうございます。相談するには説明力が必要ですが、「説明の仕方」は体系立てて教えてもらう機会はあまりないかもしれません。学校で説明の技術を学ぶことができたらいいかもしれないですね。
コメント/戸田さんが話されていた社会に出る前に準備したい要素について改めて学校で何ができるのか考えなければならないと思いました。また子ども一人一人を囲む環境が様々なので、いかに経験の機会を増やすのかが難しいと思いました。教員としてできることを頑張っていきたいです。
戸田/ご意見お寄せいただきありがとうございます。私が勤めていた就労移行支援事業所では「模擬職場」を用意して、会社の過ごし方を丸ごと模擬的に再現する場を作ったこともありました。こうしたトレーニングを実施している事業所とタイアップして体験通所するなど、学校の周囲にある社会資源をうまく活用することもありかなとも思いました。
コメント/戸田氏。5~10年後には、長く働くというよりも、社会の一部として何ができるかを考えるほうが先? ・職場側、聴覚障害者側の実情を知るのは企業・個人としてではなく、社会全体としての方が考えるのは? ・そもそも、社会は世に生を受けてから関わっているのでは?(社会に出ると意味) 働くの意義が疑問、社会、社会の皆が豊かで暮らせる、便利に暮らせるようになるために、助けてあって社会づくりしていくものではないか?
戸田/社会へどのように貢献するか、という視点を持つのは確かに大事です。一方、こうした視点に立つには、ある程度キャリア(社会に出て5,6年くらい)を積まないと難しいのではないかと感じます。今回は社会人になる前の世代を対象にしたお話にしたため「社会に対して何ができるか」、といった話には触れませんでした。おっしゃる通り、聴覚障害者を取り巻く問題については社会全体で考えることだと思います。今のこの社会状況も、これまで先達の聴覚障害者が長い時間をかけて聞こえる側に働きかけ、切り開いてきた結果です。手話言語条例もほんの数年前に制定されたことからも、社会は今ようやく変わり始めたところだと思います。ご質問者が望む社会の動きは、これから期待していいことなのではないでしょうか。
コメント/障がい者手帳をもたない軽・中等度難聴者の就労状況(職場での困りごと、どういった仕事をしているのか等)がわかれば教えていただきたいです。
杉中拓央氏(以下、杉中)/手帳を持たない方々に聴き取り調査をしたことがあります。職場での困りごとについては、手帳のある聴覚障害者と大きく違いませんでした(会議や飲み会の苦労)。ほとんどの方が、音の輪郭がぼやける感音難聴であったからでしょうか。仕事については、障害を明かさずに営業をされている方や、接客業の方がいたところ、基本電話は取ります、という方が多かったあたりが相違点かと思いますが、文字通り統計の下に「潜在」する軽・中度難聴者、全体のシェアはわかりかねます。気持ちの面では、自分は障害者なのか?という踊り場感、中二階感とでもいいましょうか、己の所属意識に悩んでいる方もいらっしゃいました。もし、中等度難聴の方で、障害者雇用を望んでいるのであれば、受診をしてみて、6級の取得を検討ください。加齢により聴力は変化するため可能性はあります。それで心の健康が担保されたり、経済的に救われたりするのであれば、急ぐべきかと思います。
戸田/手帳を持たない(持てない)場合の就労状況ですが、杉中先生が書いていらっしゃる通り、手帳のあるなしに関わらず、同じような苦労がついて回るようです。例えば複数人での会話のやり取り(会議等)や騒がしい場所での聞き取り(飲み会)といったことです。
また、電話対応などを免除されているにもかかわらず、そのことを知らない他部署の方に非難される、呼びかけを無視したとして非難されるなど、あらぬ誤解を受ける苦労もあるようです。ただ、こうした困りごとの軽減のために、多くの難聴者は人事、あるいは所属部署の上長に粘り強く自分の聞こえについて説明し、自分の居場所を作るという努力はされているようです。職業は様々ですが、総じて事務職に就くことが多いようです。特に人事、総務、経理といった部署で勤務することが多いです。社内の限られた人とのコミュニケーションだけで仕事が成り立つため、ストレスを受けにくいということも事務職が選ばれる理由だと思います。
他にも、Webデザイナーやプログラマーといった仕事に就く方もいらっしゃいます。これもコミュニケーションする人が限られる、チャットなどのコミュニケーションツールで会話が成立する、など聞こえの困りごとが少ない点から選ばれているようです。
コメント/社会に出て、どうしても(障害のために)苦手なことに取り組む必要があると思います。そのような時に社内の人にうまく伝えるにはどうしたら良いでしょうか?
戸田/苦手なことが障害からくるものであるならば、無理して適応する必要はないと考えます。では自分の聞こえ、希望する配慮をどう伝えたらよいか。
まずは聞こえの困りごとの解消法についてネットなども駆使して広く調べてみてください。そのうえで自分特有の聞こえにまつわる困りごとをどう解消すればよいか、自分の言葉でまとめて行くとよいのではないかと思います。
一つのガイダンスとして下記のページをご紹介いたします。
https://www.oticon.co.jp/hearing_for_all/2017/20170510
コメント/戸田講師のご提言は何が必要か?具体的で分かりやすかったです。ボキャブラリーを学生時代に増やして意味をつかみ、ことばの引き出しをたくさん持つことに共感しました。「説明力」は会社員のOBとして絶対必要と断言できます。上司との考課の面接、企画の説明、情報の共有のための説明etc 手話を主体に育った学生どうやって日本語の語いを増やすか?課題と思いました。企画ありがとうございました。
戸田/共感できるというご意見をいただきありがとうございます。会社員生活を送るうえで「説明力」は重要、という言葉には実感がつよくこもっていて、私も自分の提言に改めて自信を持つことができました。この企画をさらによりよいものに磨きあげて多くの人にお届けできればとの思いを強くいたしました。
コメント/益子先生。大学生(難聴)です。大学でろう文化や手話について学ぶ機会も多く、個人的にも大変関心のあるテーマが多いのですが、大学の情報保障、ろう者の理解が進むにつれ、当事者性が失われている気がします。当事者性をひとりひとり持ち、問題解決することはこれからの時代に求められると思います。その当事者性を便利な世の中になった学生も持ち続けて今後の社会に貢献できるにはどうしたら良いとお考えですか?
益子徹氏(以下、益子)/ご質問ありがとうございます。人は社会人としての自分、父親としての自分、ろう者としての自分など、その多面的な自己をそれぞれの文脈の中で位置付けて生活をしています。どの一面が不足していてもその方の生活は円滑なものとはいえないでしょう。そういった中で、ろう・難聴者としての当事者性を持つ、というのは、ろう者として、或いは難聴者としての生活の仕方、ライフスタイルなどを獲得することで、聴者の中で失われていた肯定的な自己像を回復させる意味を持っています。まずは、書物などを通した代理体験でも構わないと思います。これらを意識的に学ぶことで、より充実した社会生活がしていけるのでは。
コメント/杉中氏。聴覚障害は個性ではなく、人と社会との関係にある障壁ではないか?大事なのは、その関係をどんな風にしていくか、改善(障壁をなくす)or新しく作り直す
杉中/コメントありがとうございます。聴覚障害そのものではなく、聴覚障害がもたらす「影響」は、ご指摘のように、社会との間に横たう障壁であると考えます(この理解で合っていますでしょうか)。環境を整えることで、聴覚障害の「影響」を軽減する必要があります。そのためには、聴覚障害者自身のみならず、周囲のキャリア発達が求められます。戸田さんのお話に「雇用側が聴覚障害の内容を”知らないがゆえ”に採用が決まり、採用後の配慮は十分でない」という話がありました。聴覚障害者はこの事実をまずは受けとめて障害理解の促進に努めること、周囲は聴覚障害者の伝え方が拙くとも、丁寧に汲んでいくこと、これらを地道に繰り返すほかないと思います。結果として、双方にキャリア発達があると思います。
コメント/石田STの話と同様になりますが…聴覚障害者にとって、・会話(コミュニケーション)の成功体験(身内・身内以外)が少ないと思われます。 ・聴き取るだけではなく、その先にある会話・アウトプットの練習を学齢期に習得すると、会話スキルの基になると思います→学齢期から終業に至るまでの長期的な学習プログラムを構築させることが急務だと思われます。
石田彩氏(以下、石田)/コミュニケーションのレベルというのは発達段階とともにステップアップしていくものですので、長期的視点での学習プログラムの体系化はとても大切だと思います。貴重なご提案をありがとうございます。
これについて、プログラムではないかもしれないですが、習い事や地域行事への参加、一日子ども教室や興味のあるイベントの提案と希望があれば参加…というのが初めての場面や人の中でコミュニケーション経験をし、その内容について本人とフィードバックし合い、自分の話し方や聞き方の特徴について把握し、必要なトレーニングを選択・実施のPDCAを回すのが一つの方法かと思います。ご本人のコミュニケーションの足跡にもなりますので変化を良い意味での自信にする材料にもなりうります。個人的には対象者さんの興味がありそうなことにはアンテナを張るよう心がけています。
ですが、あまり通じない経験をするのも本人にとって負担が大きいので、フォローを考えておくこと、気を張らなくてもいい場所(家族や馴染みのコミュニティなど)を確保し、バランスをとることは配慮します。
コメント/社会人になってまだ一年ですが、学生と社会人の違いに「仕事におけるコミュニケーションは数字の内容など重要なことがほとんどで、今までのようにききもらすことができない・疲れる」ことを痛感しています。そのうえ、飲み会や雑談など「職場環境で良い関係を築くためのコミュニケーション」も必要とされていて、そこまで気が回らない・・・というのが現状ですが、「聴く」ことへの負担をへらすようなアイデアはありますか?
益子/聞くことへのご不安があるとのこと、ご不安な状態が続いていることと思います。その上で、コミュニケーションとは双方向性を有したものだといえます。従って、この解決にはお互いの存在に対する無関心な状態ではなかなか至ることが出来ません。どのようにしたら、双方の間でこの問題について意欲的に取り組むことができるようになるのか。このことを考えたときに、人間的に相手に対して興味関心が湧いているかどうか、業務の依頼を信頼してできるのかどうか、といった2要素が大きく影響すると感じます。従って、齟齬が起きないコミュニケーション方法の構築も去ることながら、日々の休憩時間などにお互いが親しくなるように務めること、このようなことからも問題解決の糸口が見つかるのではないでしょうか。
石田/おっしゃる通り、仕事上のやりとりは一つの聞き漏らしや聞き間違いが周囲に大きな影響を与えてしまうこともあります。それを自覚されていることがとても素晴らしいと感じます。こういう経験を通して職業人として社会参加する認識が育っていくとも思います。益子さんから一緒に働く同僚と積極的な関係が築けるかどうかが重要であるという意見がありました。私の方からは、「聴く」ことへの負担を減らす方法論をコメントさせていただきたいです。一つに、他感覚、(例:視覚情報)を活用することがあるかもしれません。人間は忘れる生き物ですから、健聴者であっても、大切な情報はメモに残します。話し手が重要と思う情報は事前にメモ等の視覚化しておいてもらえないかお願いするとか、一気に指示出しや情報共有をするのではなく、細切れにして、その都度内容を再確認しながらやりとりする流れをつくるなど、「急がば回れ」のスタンスをもって考えてみるのが一つかもしれません。
コメント/石田彩氏。もしも、めざすものがない(本音でも何もない場合)は、どうサポートするか?失敗したら、どんなサポートが必要か?音声が中心という社会に対して、STの視点はどう捉えているか?
石田/目指すものがない、探しているところだという方もたくさんいらっしゃいます。まず、このこと自体が悪いことでは全くないと思います。私がサポートする場合なのですが、「最近はまっていること」や「気づいたらいつもやっていること」「ちょっとでも気になること」を話のネタにしてフリートーク形式で深めていきます。その中で、「そういえば、あれってどうなってるの、どんな人が作ってるの、作る過程には何が必要なの…」など好きなものを解剖して調べてもらうなどの具体的な「ミッション」に取り組んでもらい、それをネタにしてまた話を深めて…というサイクルを行っています。そうすると、いくつかある話のネタが淘汰・洗練されてきて少し自分の将来の方向性が見えてくることもあります。
失敗した際のサポートについては、何を失敗と捉えるかにもよるかと思います.一見失敗に見えるようなことだけど、その裏には「得られたもの」もあるのではないかと見方を変えてみる提案をすることもあります。それを以て次にどうすることができるかを考えたりします。また、ご本人が失敗と捉える事実について色々な方に意見を聞くことで捉え方の多様性にふれ、考え方の幅を広げる試みも行います。
音声が中心の社会について、STとしてどのように捉えるかについて、これはあくまで私個人の考えです。また、的外れであったら申し訳ありません。まず、音声言語が日常社会におけるコミュニケーション手段の中心であることは、健聴者が多数である以上、変えがたい事実ではあると思います。ですが一方で、あくまで「中心」であり、「絶対」ではありません。健聴者であっても、音声だけでコミュニケーションをとっているわけではありません。例えば、視線や表情で言外の意味を捉えようとしたり、うまく言葉にできない感情をジェスチャーに乗せることもたくさんあります。また、電話口で相手の姿が見えない、まさに音声のみのコミュニケーションであるにもかかわらず、私たちは文脈に応じた動作を「知らないうちに」加えていたりします。このように、音声はあくまでコミュニケーションを構成する手段の一つだと私は考えています。一つひとつの手段が使用する本人の中でどのように位置づき合っているかということなのだと思います。ですが、人というのはそのことに気づきにくいのです。それは我々が「いつのまにか」音声を使いこなしているため、コミュニケーション=音声と思いこんでしまうことにあるのかもしれません。ですが、生まれたときは誰しも動作や表情、視線、泣くこと、などいわゆる非音声的な側面からコミュニケーションを出発しています。そのことを思えば、音声にこだわる必要はないのではないでしょうか。その方の性格・生活様式・アイデンティティなど様々な要素を総合的に捉え、使えるあらゆる手段を用いて「質の高いコミュニケーション」をめざせばいいと考えています。そのためにSTとしてコミュニケーションの出発に立ち返る提案を根気強く行い、「あらゆる手段を用いてわかりあうことが本質的なコミュニケーション」という柔軟な認識のある社会になっていけばいいと考えております。
益子/めざすものがない、ということについて私からもコメント致します。対象となるお子さんの状態がわからない状況ですので、的外れでしたら申し訳ありません。ただ、私達支援者がとかく見落としがちなものとして、好き、嫌い、といった嗜好には、御本人の自尊心がきちんと育まれているかということも関係しています。目指すものがない、と話をされるお子さんの中には、障害があることを理由として、何かに対して自信を持って「好き」といえない。何をやるにも不安が付きまとっている状態にあることも考えられます。従って、まずはその子の周囲の人間関係(ご家族や友人、支援関係)を見ていただき、そういった自信をどうしたら獲得できるのか。どうしたら関心の持てるものを作れるのか、そういったことをお考えになってみることもよろしいかと思います。
杉中/めざすものがないというのは、めざすものを吟味する機会に触れていないということもあるのではないでしょうか。聴覚障害の影響で、あれもだめ、これもつらいと、どうしても聴者より引き算で将来展望をしがちです。しかし街へ出て、物理的に人よりも多くのことを経験するほかないと思います。誰も知らないうまいやり方が見つかるかも知れません。私も絶えず探しています。
コメント/キャリア支援の面で、高校生に必要な事はなんですか?(高校で挫折する、地域の学校に通う聴覚障害者が多いように感じています。学齢期ほど手厚い支援もなく、大学ほど大人でない中、サポートが切れる環境下にいる子が多いのではと思います)
石田/高校に入ると多くの場合は支援が義務教育段階ほど手厚くないことは確かに多いです。入学する前に学校を見学したり、教員と面談したり、などしてその環境下で自分には何が必要か、何があれば過ごし方の質を上げることができるのかの「現時点での状況」を棚卸しておくことは、自己認識の一環となるのではないかと思います。また、入学後に「気軽に」自分の状況と気持ちを表明できる「待避所」を見つけることも大切になると思います。
コメント/なぜ娘がすぐにキレるのかがわかりました。言葉にして伝えることができないもどかしさなんですね。これを解決するためには語彙を増やさなければならない。ふやすためにはどうすればいいのか、娘に合った方法は何?さらに語彙を結びつけることが大切。ではどうすればよいのか?考えることがたくさんであたまが一杯です。幸い学校の先生が今日いらっしゃっているので相談しながら、よりよい方法を見つけていきたいです。とてもよい講演会でした。このような機会があることすら知らない人が多いと思います。情報発信の仕方を考えて頂けるとさらによいかと思います。こんなにすばらしい話、もっとたくさんの方にきいてほしいと思いました。地方でも、お願いします!!
杉中/今回は準備期間が少なく、参加者の皆様に支えられたイベントでした。改めて御礼申し上げます。広報はじめ諸課題も認識しており、次回があれば改善したいと思います。地方の(もちろん都市部にもいるであろう)情報や交流を必要とされている方、届きにくいところにいる方に届けたいという気持ちがあります。今後もご指導下さいますと幸いです。
コメント/一人一人の基礎学力の定着をさせること、一人一人が自分なりのキャリア発達支援を受けられるための必要な環境整備とは?(言語聴覚士)
石田/周囲の人もまた本人を取り巻く重要な環境要因だと考えております。定着もキャリア発達もとても個人差はありますが、長い時間をかけて醸成されていくものですので、支援者(人的環境)が「気長に」本人の今の姿を受け止める度量をもつことが必要なのではないかと個人的には思っております。
コメント/講師のみなさますばらしいお話ありがとうございました。特に杉中先生のすばらしいお話勉強なりました。あっという間で残念…たぶん若い学生やお母さんも多かったのですごく丁ねいに話されていましたが…キャリアのご研究のお話をもっと知りたかったです。「余談」はどうやって調べられたのですか。私個人的に絶対あるあるだと思いました。
杉中/ありがとうございます。アンケート(心理尺度)をいくつか使っています。あとは生年月日を教えてもらい、そこから日齢を算出して、あれこれと統計的に処理することで調べています。
コメント/今回の講演を通して、聴覚障害の就労の現状を改めて再認識するとともに、社会に出る前に身につける力は非常にたくさんあると思った。特に自分のきこえを理解して周囲とやりとりしたり説明したりする力はとても大切だと思う。今は人工内耳が普及してきて「きこえる」子どもが増えてきているが、その「聞こえる」はどの場面でも同じなのか、本人の聞こえと周りの受けとめ方に差はあるのか、今の「聞こえる」感覚は社会に出ても通用するのか、ということを本人そして周囲の大人が気付いてく必要があると思った。本人(こども)がその自覚を持つためには周りの存在がとても大切になってくる。「聞こえる」ことの裏に潜む見えない課題に気付いて、一緒にどうしていくべくきか考えることが、本人の自己理解の一歩につながるのではないかと思った。
益子/私達にとって、聴こえる、ということは「聴く+自分の意見をその場で整理できる」という状態を意味していることが多いと感じます。そのようなことを考えた場合に、彼らの聞こえは、「相手の云いたいことを集中すれば理解できる」程度であることが多いのではないでしょうか。周囲との時間的なズレが無く、相手の話をきちんと理解した上で、自分の意見を十分に整理する。ここには、やはり本人も周囲も適切なコミュニケーション方法を獲得することが必要です。また、その環境ごとに今が「聞こえている段階」までなのか。それとも、時間的なズレがなく「思考を整理できる段階」に至っているのか。こういったことを正確に見極め、コミュニケーション方法を模索することが求められるのではないでしょうか。
杉中/1.音がきこえる 2.かつ言葉がわかる、3.その言葉の意味が理解できる 4.その意味を状況に応じて(言外の意味を)解釈できる。この四点は似て非なるものですよね。当事者も周囲も、そして専門家も、それを認識できるとよいのですが。
コメント/難聴の娘をもつ母親です。現在、私立の一貫校に通っています。周囲の同級生が大きな夢を持つ中で、自分には何が出来るのか、難聴があっても働ける仕事はあるのか、毎日悩んでいます。難しいです。今回のイベントで、どんな仕事につくにしろ、自分から雇う側に寄り添う気持ちが大切だと知り、一歩前進できたと思います。
杉中/聴覚障害の影響を受けながらも、希望の職業についていらっしゃる方は多いです。川があって渡れなければ架橋するように、周辺環境をどうにかすれば、障害は障害でなくなります。大変なことではありますが、周辺環境を調整する方もまた人間ですから、戸田さんが指摘する説明力の大切さというところに帰結します。個人的な意見ではありますが、今は夢や希望を大切にして、さまざまな場所に赴いたり、情報を集めたりすることで、その可能性を拡げていただきたいと思います。雇う側も人の子なので、強い思いがあれば味方をしてくれるかも知れません。また、仕事の内容を吟味していくうちに、憧れていた仕事は実はそれほどでもなかった…なんてこともありますし、代わりに意外なところから目標が生まれるかも知れません。聴覚障害に引っ張られて職を探していると、職務内容に対するミスマッチ、不適応が心配です。期待していたよりも職務が単調…などで、情熱をくじかれるのは辛いことです。蛇足ですが、世は情報社会であり、コミュニケーションのテキスト化、データ化が増えています。若者の電話嫌いや、企業においても、メール連絡やテレワークの励行という動きもあります。期せずして、聴覚障害者にとって追い風が吹いていると感じます。
コメント/言語化する力を付けるために0-2歳児の頃に大切なのは何。親子の関わり方は?
石田/0~2歳の取り組みについては、近年ではベビーサインの活用も注目されております。こちらをご参考(https://www.babysigns.jp/about_babysigns)いただければと思います。その上で、親子の関わりについては発達心理学その他の先生のほうがお詳しいことと思いますが、周囲への関心をどのようにもたせることができるのか、ということが大きいのではないでしょうか。身体を動かすことなどを通して、まずは外に彼らが働きかけることを促せるような関わりが重要と考えます。
杉中/個人的な意見ですが、まず大切なのは十分に身体を動かすことではないかと思います。言葉を受け入れ、育てるための脳を発達させます。難聴児のお母さんからは、たえず絵本の読み聞かせをしたことがよかった、という話をよく伺います。
コメント/キャリアについては未来と現在のどちらを優先したらよいのか、ときどき分からなくなるときがあります。現在→未来の「わだち」がつながっていればこの「不調和」もなくなるのですかね、、考えるきっかけをありがとうございました。・その日のエネルギーによって、きこえ含めた自分の状態について説明を試みようとするときと割り切りを選んでしまうときがあるきがしています。言語化スキル磨きたいです。
杉中/「その日のエネルギーによって」のくだり、とても共感します。物事0か1かではなく、0.8とかでも良いのに、1でありつづけようとして疲れてしまう方がいらっしゃいます。障害の説明ばかりしていると、障害の説明ばかりしている人という印象になってしまうので、一度びしっとやって、効果を長持ちさせたいですよね。たとえば感音難聴の説明でしたら、職場のめがねっこを捕まえて「めがねを外したら見えませんよね?それと同じ状態です。近づいていくと段々見えてはくる(きこえてくる)けど、それでも目の前には常に擦りガラスが一枚ある状況なんですよ」(うーん説明がへたですね。これをブラッシュアップしてください笑)というように、身近なものに例えると興味も持ってもらえて、効果的じゃないかなと思います。
事務局 香川
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